こんにちは、エレキギター完全ガイドの山田です。
ギブソンのレスポールについて調べていると、必ずといっていいほど「1959年」という数字に行き着きます。1958年や1960年にも魅力的なレスポールは存在するのに、なぜ1959年製だけが特別扱いされるのか。さらに、現在販売されている「1959 Les Paul Standard Reissue」や、通称R9は本物の1959年製と何が違うのか。価格が100万円前後まで上がるモデルを見て、そこまでの価値があるのか疑問に感じる方もいるでしょう。
私自身、エレキギターを30年以上弾き、これまで25本以上のギターを購入してきました。その経験から感じるのは、1959年型レスポールの魅力は単に「昔のギターだから高い」という話ではないことです。歴史、仕様、外観、使用したギタリスト、希少性、そして現代のリイシューモデルまで含めて一つの大きな文化になっています。
この記事では、オリジナルの1959年製レスポール・スタンダードが伝説になった背景から、1958年・1960年との違い、PAF、バーストカラー、R9、VOS、Murphy Lab、現在の新品・中古価格まで順番に整理します。高価なモデルを買うべきか迷っている方も、自分に必要なレスポールを判断しやすくなるはずです。
- 1959年製レスポールが特別視される理由
- 1958年型と1960年型との主な違い
- R9やVOSとMurphy Labの意味
- 新品と中古の価格帯と選び方
ギブソン1959年レスポールが特別な理由
1959年モデルはなぜ伝説なのか
ギブソンの1959年製レスポール・スタンダードが特別視される理由は、一つのスペックだけでは説明できません。1950年代後半のレスポールは、マホガニーバックにメイプルトップを組み合わせたセットネック構造、2基のハムバッカー、Tune-O-Matic系ブリッジとストップテイルピースという、現在まで続くレスポールの基本形を完成させていました。
その中でも1959年は、後に「Burst」と呼ばれるサンバースト仕上げ、PAFハムバッカー、華やかなメイプルトップ、演奏性のバランスなどが一つの時期に重なった年として語られています。ただし、当時のギターは現在の工業製品のように全個体が完全に同一仕様だったわけではありません。ネックの太さやトップの杢目、塗装の退色具合、ピックアップの出力などには個体差があります。
つまり、「1959年だからすべて同じ音」という理解は適切ではありません。それでも後世のロックやブルースで著名なギタリストがオリジナルのバーストを使用し、その音と外観が強烈なイメージとして残りました。結果として1959年型は、レスポールというモデルそのものを象徴する基準点になったのです。
現在のGibson Customが1959 Les Paul Standard Reissueを長年作り続けていることからも、この年式がブランドにとって重要な存在であることが分かります。単なるヴィンテージ人気ではなく、現代の復刻モデルの設計目標になっている点が1959年型の特殊さです。
1958年モデルとの違い
1958年と1959年のレスポール・スタンダードは、まったく別のギターではありません。むしろ同じ「バースト期」の流れにあるため、共通点の方が多いと考えた方が分かりやすいでしょう。
現行のGibson Customのリイシューで比較すると、1958年型は比較的太く丸みのあるネック、プレーントップを基本とした外観、ナローフレットなどが特徴として打ち出されています。一方、1959年型はフィギュアドメイプルトップが象徴的で、ネックも1958年型より若干扱いやすい方向のプロファイルとして再現されています。
| 比較項目 | 1958年型の傾向 | 1959年型の傾向 |
|---|---|---|
| トップ | プレーンメイプル中心 | フィギュアドメイプルが象徴的 |
| ネック | 太く丸い傾向 | 太さと握りやすさの中間的傾向 |
| フレット | 復刻ではナロー系 | 復刻ではヒストリック系ミディアムジャンボ |
| 人気 | 無骨なルックスと太い握りが魅力 | バーストの代表格として人気が高い |
ただし、オリジナル個体は年が変わった瞬間に仕様が一斉に切り替わったわけではありません。そのため、1958年なら必ず極太、1959年なら必ず同じ太さ、と断定するのは危険です。実際に購入する場合は「R8だから」「R9だから」だけで決めず、重量、ネックシェイプ、フレット、鳴り方を個体ごとに確認する方が現実的でしょう。
1960年モデルとの違い
1960年型も基本構造は1959年型の延長にありますが、年の途中からネックが薄くなった個体が増え、外観面でもリフレクターノブやダブルリングのチューナーボタンなど、後期仕様を象徴する要素が見られます。現行の1960 Les Paul Standard Reissueでも、1959年型よりスリムなネックプロファイルが大きな違いとして設定されています。
そのため、ヴィンテージらしい厚みのあるネックを握りたい方は1958年型や1959年型、現代的な薄めのネックに慣れている方は1960年型を弾きやすいと感じる可能性があります。ただし、ここでも「音の優劣」と「弾きやすさ」は分けて考えるべきです。
私はギターを選ぶとき、年代やグレードより先にネックを確認します。音が好みでも、左手に合わないギターは長時間弾くほど負担になります。R8、R9、R0で迷っているなら、カタログ上の評価だけでなく、同じアンプ・近い設定で弾き比べることをおすすめします。
PAFが作る音の特徴
1959年型レスポールを語るうえで欠かせないのが、PAFと呼ばれる初期のギブソン・ハムバッカーです。PAFはPatent Applied Forの略称で、当時のピックアップ裏面に貼られたステッカーに由来する呼び名として定着しました。
現在の高出力ハムバッカーを想像すると、1959年型のイメージをつかみにくいかもしれません。ヴィンテージPAFは「とにかく出力が高く太い」というより、ピッキングへの反応、コードを鳴らしたときの分離感、中域の存在感、高域の抜けといった要素が魅力として語られます。また、当時の製造にはばらつきがあるため、抵抗値や磁力、巻き数などにも個体差があります。
この個体差こそがオリジナルPAFの神秘性を高めた面もあります。一方で、現代のプレイヤーがヴィンテージPAFそのものを追いかける必要はありません。Gibson CustomのR9にはCustombucker Alnico 3が採用されており、低〜中出力寄りのヴィンテージライクな反応を現代の楽器として再現する方向に設計されています。
音作りでは、ピックアップだけを切り離して考えないことも重要です。レスポールはボディ、ネック、ブリッジ、ナット、ポット、コンデンサー、弦、アンプまで含めた全体で鳴ります。PAF系ピックアップへ交換すれば自動的に1959年の音になるわけではありません。
バーストの色と杢目の魅力
1959年レスポールの写真を見て最初に目を奪われるのは、やはりメイプルトップです。炎のように見えるフレイム、見る角度で表情が変わるフィギュア、赤みが残った個体から大きく退色した個体まで、同じサンバーストでも印象はかなり異なります。
ヴィンテージ個体では、紫外線や保管環境などの影響によって赤い染料が退色し、いわゆるレモンバーストやティーバーストのように見えるものがあります。現在のリイシューには、こうした経年変化後の姿をイメージしたカラーも用意されています。そのため「1959年型らしい色」は一色ではありません。

トップの杢目は所有満足度に大きく影響しますが、派手な杢目ほど音が良いとは限りません。楽器として選ぶなら、見た目だけでなく重量、ネック、音の立ち上がり、各弦のバランスまで確認したいところです。一方で、レスポールは眺める楽しさも大きいギターなので、最終的に「このトップが好き」と思えることも立派な選択理由だと私は考えています。
オリジナルが高額な理由
オリジナルの1959年製レスポール・スタンダードは、通常の中古ギターとは別の市場で扱われるコレクターズアイテムです。高額になる最大の理由は、当時の製造数が限られ、現存するオリジナル個体がさらに限られることです。
そこへ著名ギタリストの使用歴、ロック史における象徴性、PAFやオリジナルパーツの希少性、個体ごとの来歴が加わります。単純な「材料費+製造費」で価格を説明できるものではありません。美術品やクラシックカーに近く、歴史的価値と市場の需要が価格を形成しています。
なお、1959年の正確な製造本数については、資料によって扱い方や数字が異なるため、単一の数字だけを絶対視しない方が安全です。重要なのは、現在の一般的な量産ギターとは比較にならないほど希少であり、オリジナル状態を保った個体はさらに少ないという点でしょう。
そのため、演奏用として1959年型の魅力を味わいたい人にとって、オリジナルは現実的な選択肢になりません。そこで意味を持つのがGibson Customの1959 Les Paul Standard Reissue、通称R9です。
ギブソン1959年レスポールの復刻と選び方
R9とは何を指すのか
R9は一般に、Gibson Customの1959 Les Paul Standard Reissueを指す略称として使われています。「R」はReissue、「9」は1959年を示すという理解でよいでしょう。同様に1958年型はR8、1960年型はR0と呼ばれることがあります。
ここで注意したいのは、R9は1959年に製造されたヴィンテージそのものではなく、1959年仕様を現代に復刻したギターだということです。中古市場では「59」「1959 Reissue」「Historic Collection」「R9」など複数の表記が混在するため、年式とモデル名を分けて確認してください。
たとえば「2019年製R9」であれば、2019年に作られた1959年型リイシューです。1959年製という意味ではありません。高額な中古品ほど、この基本確認が重要になります。
現行リイシューの仕様
現行の1959 Les Paul Standard Reissueは、見た目だけを1959年風にしたモデルではありません。Gibson Customはボディやネックの構造、接着方法、ハードウェア、電装系まで含めて歴史的仕様を再現する方向で設計しています。
| 主な項目 | 現行R9の代表的仕様 |
|---|---|
| ボディバック | 1ピースの軽量マホガニー |
| トップ | 2ピースのフィギュアドメイプル |
| ウェイトリリーフ | なし |
| ネック | マホガニー、ロングテノン |
| 指板 | インディアンローズウッド |
| スケール | 24.75インチ |
| ピックアップ | Custombucker Alnico 3 |
| ブリッジ | ABR-1 |
| テイルピース | 軽量アルミニウム |
| コントロール | CTS 500kポット、Paper-in-Oil系コンデンサー |
こうした仕様は魅力ですが、スペック表だけを見て「必ず良い音」と決めない方がよいでしょう。同じR9でも重量や木材の個体差、セットアップによって弾き心地は変わります。私なら可能な限り複数本を試し、アンプの設定をそろえて比較します。
VOSとMurphy Labの違い
R9を探すと、VOSやMurphy Labという表記を目にします。ここが分かりにくいため、購入前に整理しておきましょう。
VOSはVintage Original Specの略称として使われ、金属パーツや塗装に新品の強い光沢を抑えた雰囲気を持たせた仕上げです。長年使い込まれて大きな傷が入ったギターというより、丁寧に保管されながら時間が経過したヴィンテージを思わせる方向です。
Murphy Labは、Gibson Custom内でエイジド表現を追求するラインです。塗装のウェザーチェック、金属パーツのくすみ、使用痕などを段階的に再現します。Ultra Light Aged、Light Aged、Heavy Agedなど、モデルによってエイジングの程度が異なります。
ここで大切なのは、エイジドが強いほど音が良いと決まっているわけではないことです。Murphy Labの価値は、ヴィンテージらしい外観や触ったときの雰囲気を含めた完成度にあります。傷のない新品感を楽しみたいならGloss、少し落ち着いた雰囲気ならVOS、既に弾き込まれたバーストのような外観を求めるならMurphy Labという選び方が分かりやすいでしょう。
2026年の価格帯
2026年8月時点で国内楽器店の掲載を確認すると、Gibson Customの1959 Les Paul Standard Reissueは、通常のVOSやGloss系でも80万円台後半から110万円台程度まで幅があり、トップ材、カラー、販売店オーダーなどによって差があります。
Murphy Lab仕様では120万円前後から140万円前後の掲載例があり、通常仕様より高価です。中古のR9は70万円台から100万円前後の掲載例が見られますが、製造年、状態、重量、付属品、人気カラー、限定仕様によって価格は大きく変わります。
| 区分 | 2026年8月の掲載目安 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 新品VOS・Gloss | 80万円台後半〜110万円台程度 | トップ、重量、カラー、仕様 |
| Murphy Lab | 120万円前後〜140万円前後 | エイジング段階、トップ、限定性 |
| 中古R9 | 70万円台〜100万円前後 | 年式、改造、付属品、修理歴 |
価格は在庫状況や為替、仕様変更によって動くため、上記は固定価格ではありません。購入時にはイケベ楽器、石橋楽器など複数の専門店で同時期の在庫を比較することをおすすめします。同じ「R9」でも条件が違うため、最安値だけで判断しないことが重要です。
また、現在所有しているギターを下取りに出す場合は、購入店の下取りだけでなく楽器専門の買取店でも査定を取ると比較しやすくなります。R9クラスの高額品では、数万円の査定差でも実際の負担額に大きく影響するからです。
中古R9で確認したい点
中古R9は新品より価格を抑えられる可能性がある一方、確認項目が増えます。特に高額なギターでは、外観の傷よりもネック、フレット、修理歴、パーツ交換の方が重要です。
- ネックの反りとトラスロッドの余裕
- フレットの残量とすり合わせ歴
- ナット交換やリフレットの有無
- ピックアップやポットの交換歴
- ネック折れやヘッド補修の有無
- 純正ハードケースと認定書の有無
- シリアルとモデル年式の整合性
レスポールはヘッド角が付いた構造なので、転倒や落下によるヘッド周辺の補修歴も確認したいポイントです。きれいに修理され、演奏上問題のない個体もありますが、価格はオリジナル状態と同じではありません。
また、ピックアップ交換は必ずしも悪い改造ではありません。演奏用なら好みの音に変更されていることがプラスになる場合もあります。ただしR9はオリジナル仕様そのものに価値を感じる購入者も多いため、純正パーツが残っているか、元に戻せるかは将来の売却価格にも関係します。
1959モデルを選ぶ基準
R9を選ぶとき、私は「何年製が当たりか」という考え方だけに寄り過ぎないことをおすすめします。Gibson Customは時期によって仕様のアップデートがありますが、同じ年の同じモデルでも個体差があるためです。
まず確認したいのはネックです。1959型らしい厚みが自分の左手に合うか、1フレット付近だけでなく12フレット付近まで弾いて確認します。次に重量。軽ければ必ず良いわけではありませんが、立って長時間演奏する方にとっては重要です。
音については、開放弦の生鳴りだけで結論を出さず、アンプにつないでクリーンと軽いクランチの両方を試したいところです。フロントでコードがこもり過ぎないか、リアで高音が痛過ぎないか、センターポジションで音量差が大き過ぎないかを確認すると、その個体の使いやすさが見えてきます。
そして最後は外観です。R9の価格帯まで来ると、性能だけでなく所有欲も無視できません。トップの杢目、バーストの色、バックの色合いまで含めて「ケースを開けたくなるギター」を選ぶことは、長く所有するうえで大切だと思います。

予算が限られているなら、無理にR9へ行く必要はありません。Gibson USAのLes Paul Standard 50sや、Epiphoneの1959年型を意識したモデルなど、価格を抑えた選択肢もあります。「1959」という言葉ではなく、自分が欲しいのが太めのネックなのか、ヴィンテージ系ハムバッカーの反応なのか、見た目なのかを分解して考えると選びやすくなります。
よくある質問
R9は本物の1959年製ですか
いいえ。R9は1959年仕様を再現したリイシューモデルです。たとえば2025年製R9なら、2025年にGibson Customで製造された1959 Les Paul Standard Reissueを意味します。
R8とR9はどちらが上ですか
単純な上下関係ではありません。R8は太いネックやプレーントップを好む方に魅力があり、R9はフィギュアドトップと1959年型のバランスを求める方に人気があります。価格はR9の方が高い傾向がありますが、弾きやすさや音の好みは別問題です。
R9なら必ず軽いですか
軽量なマホガニー材が選ばれていますが、天然木を使用するため個体差があります。ウェイトリリーフなしの構造でも重量は一本ずつ異なるので、販売ページの実測値を確認してください。
Murphy Labは音も良いですか
Murphy Labだから必ず通常のVOSより音が良いとは断定できません。大きな価値は、ラッカーの質感やウェザーチェック、パーツの経年表現など、ヴィンテージらしい外観と雰囲気にあります。音は個体ごとに試奏して判断するのが確実です。
初心者がR9を買っても大丈夫ですか
予算に無理がなく、そのギターを長く弾きたいなら問題ありません。ただし、高価なギターを買えば自動的に上達するわけではありません。初めての一本なら、弾きやすいセットアップ、購入後の調整、保証や修理相談ができる店を選ぶことも同じくらい重要です。
資産価値を目的に買えますか
将来の価格上昇を保証することはできません。R9は中古市場でも人気がありますが、相場は為替、仕様、年式、状態、需要によって変化します。投資商品としてではなく、実際に弾きたい、所有したいという気持ちを基本に選ぶ方がよいでしょう。
ギブソン1959年レスポールの結論
ギブソン1959年レスポールが伝説と呼ばれるのは、PAF、バースト仕上げ、メイプルトップ、セットネックといった仕様だけが理由ではありません。その後のロックやブルースで生まれた音楽、著名ギタリストの使用、限られたオリジナル個体、そして現在まで続く復刻文化が重なり、1959年型そのものがレスポールの象徴になりました。
オリジナルの1959年製は、もはや一般のプレイヤーが気軽に購入する中古ギターではありません。一方、R9なら1959年型の構造や外観、演奏感を現代の楽器として体験できます。VOSなら比較的自然なヴィンテージ感、Murphy Labならさらに強い経年表現を楽しめるため、好みに合わせて選べます。
ただし、R9という名称や製造年だけで「当たり」を判断する必要はありません。ネックの握り、重量、アンプにつないだ音、トップの見え方、状態、価格まで含めて自分が納得できる一本を選ぶことが大切です。私なら、同価格帯の個体をできるだけ複数弾き比べ、最後は弾いていて手放したくないと思えるギターを選びます。
1959年という数字に憧れること自体は、レスポールを楽しむ大きな入口です。ただ、その背景を知ったうえで選べば、R8やR0、Gibson USAを含め、自分に本当に合う一本も見えやすくなります。歴史への憧れと実際の弾きやすさ、その両方を大切にして選んでください。



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